| 第31回 日本統計学会賞 |
|---|
| 増田 弘毅 氏、樋口 知之 氏 |
| 第6回 日本統計学会中村隆英賞 |
|---|
| 樋口 美雄 氏、椿 広計 氏 |
| 第22回 日本統計学会統計活動賞 |
|---|
| (一財)日本統計協会 |
| 第22回 日本統計学会統計教育賞 |
|---|
| 株式会社Rejoui、地道 正行 氏 |
| 第20回 日本統計学会研究業績賞 |
|---|
| 荻原 哲平 氏、栗栖 大輔 氏 |
| 第19回 日本統計学会出版賞 |
|---|
|
該当なし |
| 第40回 日本統計学会小川研究奨励賞 |
|---|
| 後藤 佑一 氏 |
1999年 早稲田大学理工学部情報学科卒業,2004年 東京大学大学院数理科学研究科博士課程修了・数理科学博士,2004年 九州大学大学院数理学研究院助手,2010年 九州大学大学院数理学研究院准教授,2011年 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所准教授,2015年 九州大学大学院数理学研究院教授,2022年 東京大学大学院数理科学研究科教授,現在に至る.
増田氏はこれまで,非正規型の確率過程モデルの漸近推測について重要な貢献をしてきた.とくに顕著な貢献として,非線形レヴィ駆動型確率微分方程式モデルを統一的に扱うための正規型擬似尤度および非正規安定型擬似尤度を導入し,それらの相補的な性質を解明するとともに,理論を体系化したことが挙げられる.また,局所漸近二次構造をもつ広範な統計モデル族に対するシュワルツ型情報量規準の一般形を導出し,さまざまな後続研究の進展に多大な影響を及ぼした.レヴィ駆動型モデルのAICおよびBICとして非自明な正しい形も導いている.いずれの結果もレヴィ過程のもつ多様な微小時間確率構造を適切に捉えつつ簡明な形式で与えられており,実用・実装まで視野に入れつつ当該分野の理論基盤を展開するものである.同氏はこれまでLecture Notes in Mathematics (Springer) からの招待執筆や数理統計・確率解析コミュニティからの招待講演も多数おこなってきており,国際的にも広く認知されている.同氏の一連の研究成果は,レヴィ駆動型統計モデルの推測に,ひいては確率過程の統計学の発展に大きく貢献するものである.増田氏の統計学の発展および普及に対する多大な貢献は,日本統計学会賞に相応しい.
[1] Eguchi, S. and Masuda, H. (2024), Gaussian quasi-information criteria for ergodic Lévy driven SDE. Annals of the Institute of Statistical Mathematics, 76, 111-157.
[2] Masuda, H. (2023), Optimal stable Ornstein-Uhlenbeck regression. Japanese Journal of Statistics and Data Science, 6, 573-605.
[3] Masuda, H., Mercuri, L. and Uehara, Y. (2022), Noise inference for ergodic Lévy driven SDE. Electronic Journal of Statistics, 16:(1), 2432-2474.
[4] Masuda, H. (2019), Non-Gaussian quasi-likelihood estimation of SDE driven by locally stable Lévy process. Stochastic Processes and their Applications, 129:(3), 1013-1059.
[5] Eguchi, S. and Masuda, H. (2018), Schwarz type model comparison for LAQ models. Bernoulli, 24:(3), 2278-2327.
1984年東京大学理学部卒業,1989年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了,理学博士号取得,1989年統計数理研究所助手,1994年同助教授,2002年同教授,2004年統計数理研究所副所長,2011年統計数理研究所所長,情報・システム研究機構理事,2014年総合研究大学院大学教育研究評議会評議員,2019年中央大学教授,統計数理研究所名誉教授,現在に至る.2020年11月「現代の名工」受賞.
樋口知之氏は,時系列解析,ベイジアンモデリング,統計計算を中心としたデータサイエンス分野において顕著な成果を挙げてきた.時系列解析では,Higuchi法として広く知られるフラクタル解析法や粒子フィルタにおける退化問題を解決する手法を提案し,当該分野に顕著な成果をもたらした.また,ベイジアンモデリングと統計計算の応用として,ライフサイエンス,マーケティング,センサ・IoTなど多様な応用分野で成果を挙げた.特に,気象・海洋学分野の手法であったデータ同化を統計科学の観点から整理し,他分野に拡大するパイオニアとして活動したことで,データ同化の適用分野が大きく拡大し,諸科学・産業の発展に寄与した.加えて,統計数理研究所所長,日本統計学会会長,統計関連学会理事長等の要職を歴任し,人材育成や統計学の発展・普及にも尽力した.その活動は,統計数理研究所統計思考院の人材育成事業,海外諸機関・コミュニティとの交流による国際化,国内の数学・数理科学分野との連携,女性研究者の育成など枚挙に暇ない.樋口氏の統計学・データサイエンス分野への貢献は多岐にわたる顕著なものであり,日本統計学会賞にふさわしいものである.
[1] 樋口知之(編著)他 (2011).「データ同化入門:次世代のシミュレーション技術」,朝倉書店.
[2] S. Imoto, T. Higuchi, et al. (2004). Combining microarrays and biological knowledge for estimating gene networks via Bayesian networks, Journal of bioinformatics and computational biology, Vol. 2, 77-98.
[3] S. Nakano, G. Ueno, and T. Higuchi (2007). Merging particle filter for sequential data assimilation, Nonlinear Processes in Geophysics, Vol. 14, 395-408.
[4] T. Higuchi (1997). Monte Carlo filter using the genetic algorithm operators, Journal of Statistical Computation and Simulation, Vol. 59, 1-23.
[5] T. Higuchi (1988). Approach to an irregular time series on the basis of the fractal theory, Physica D: Nonlinear Phenomena, Vol. 31, 277-283.
1975年慶応義塾大学商学部卒業, 1977年慶応義塾大学商学部助手,1980年慶応義塾大学大学院大学院商学研究科後期博士課程修了,1982年慶応義塾大学商学部助教授,1991年商学博士 慶応義塾大学商学部教授,1993年一橋大学経済研究所客員教授,1995年オハイオ州立大学経済学部客員教授,2009年統計委員会委員長,慶應義塾大学商学部長,2010年日本学術会議経済学委員会委員長,2012年日本経済学会会長,2013年労働政策審議会会長,2016年紫綬褒章,2018年労働政策研究・研修機構理事長,2019年慶応義塾大学名誉教授,2025年日本学士院会員,現在に至る.
樋口美雄氏は,公的統計のミクロデータ2次利用や匿名データ活用の道を切り開き,自らもパネルデータを開発し,適切な推定方法によって動学仮説を検証し,国際比較を行ってきた.80年代の米国留学を機にNLSやPSIDの調査機関を訪問し,ミクロデータ開発や動学分析を体験した.帰国後,その有効性を中村隆英先生に伝えたところ,日本での具体的活用法を検討するようにとの指導を受け,『就業構造基本調査』や『全国消費実態調査』の個票を使って,ダグラス=有沢法則やその変化,離転職に伴う雇用条件の変化,個人・企業特性による違いを検証した.90年代に入り,女性就業やキャリア形成支援,税・社会保障,労働時間・雇用法制,資産形成等の制度改革の効果分析(EBPM)を行うには,同一個人・企業を追跡したパネルデータが必要だと考え,自らリーダーとして『消費生活に関するパネル調査』,『日本家計パネル調査』,『新規開業企業パネル調査』,『新型コロナ期の家計・企業パネル調査』を分析し動的仮説検証を行うとともに,これらのデータを他研究者に公開してきた.長年にわたる樋口氏の研究功績は日本統計学会中村隆英賞に相応しい.
[1] “The Dynamics of Poverty and the Promotion of Transition from Non-Regular to Regular Employment in Japan: Economic Effects of Minimum Wage Revision and Job Training Support,” The Japanese Economic Review, Vol.64, Issues 2, 2013.
[2]『雇用と失業の経済学』日本経済新聞社 2001.
[3] “Family Leave Policies and Women’s Retention After Childbirth: Evidence from the United States, Britain and Japan,” with J. Waldfogel and M. Abe, Population Economics, Col12, .No.4, 1999
[4] “Japan’s Changing Wage Structure; the Impact of Internal Factors and International Competition,” Journal of Japanese Economies, Vol.3, No.4,1989.
[5] 『日本経済と就業構造』(東洋経済新報社)1989.
1982年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了,同年東京大学工学部計数工学科助手,1987年慶應義塾大学理工学部数理科学科講師,1997年筑波大学大学院経営システム科学専攻助教授,2000年同大学院教授2007年統計数理研究所データ科学研究系教授,2010年同研究所副所長,2015年独立行政法人統計センター理事長,2019年情報・システム研究機構理事・統計数理研究所所長,2024年情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設副施設長,現在に至る.2026年学校法人昭和女子大学理事長,現在に至る.
椿広計氏は品質マネジメントを専門とする統計家として,多くの分野に貢献してきた.所属した東京大学,慶應義塾大学,筑波大学,統計数理研究所,統計センターにおいて,様々な分野の人々と共同研究を重ねる中で,公的統計ミクロデータの二次利用に関する研究と実務,また統計作成プロセスの第3者適合性評価に関する研究と実装を主導した.また,統計センター理事長や総務省統計委員会委員長等を通じて,公的統計の品質保証や二次利用制度の整備に関与し,研究者・行政・民間が連携して経済統計を活用できる制度的枠組みにも貢献してきた.これらの取り組みは,EBPMの定着や実証研究の発展を支え,我が国の経済統計を政策立案や社会課題解決を支える知的基盤として高度化するものであり,その社会的意義は極めて大きい.長年にわたる椿氏の研究功績は日本統計学会中村隆英賞に相応しい.
[1] 椿広計 (2025) 統計作成者から見た日本の公的統計データの現状と課題,日本労働研究雑誌 67(779) 14-24.
[2] 山下 雅代, 椿 広計, 飯島 信也 (2019) 教育用標準データセット(SSDSE)による探究型統計教育の促進 : 総務省統計コミュニティの試み (特集 数学科におけるデータサイエンス(1)),日本数学教育学会誌101(3) 40-47.
[3] 篠恭彦, 澤村保則, 本間怜志, 椿広計 (2018) JSQC規格 JSQC-Std89-001「公的統計調査のプロセス-指針と要求事項」,品質 48(3) 238‐242.
[4] 岡檀, 山内慶太, 椿広計 (2017) 在宅介護負担が増える要因の探索;社会生活基本調査・生活時間編を用いての検討,日本社会精神医学会雑誌 26(3) 246‐247.
[5] 松田芳郎,伴金美,美添泰人・編著 (2000)『ミクロ統計の集計解析と技法』,講座ミクロ統計分析②,日本評論社 (椿 広計・分担執筆, 範囲:5章3節「欠測値とその補完」,6章2節3項「S-plus」).
月刊誌『統計』による統計学及び統計の普及・啓発活動
月刊誌『統計』((一財)日本統計協会発行)は,統計学及び統計の普及・啓発を目的として1947年から刊行されている月刊誌である.同誌は,統計実務家,統計研究者,統計入門者などを主な対象として比較的平易な内容となっており,統計に関心のある読者に広く親しまれてきた.取り扱っているテーマは,創刊初期には公的統計,人口・経済統計等が中心であったが,その後の統計学及び統計実務の発展に対応して,標本調査手法や様々な推計・分析の手法等も取り扱うようになるなど,対象範囲が順次拡充されてきた.さらに最近では,公的ミクロ統計データ分析,統計教育,データサイエンスなどの発展に対応して,統計学及び統計に関わる最新の話題も幅広く取り扱っている.約80年にもわたり継続されている同誌を刊行する活動は,社会における統計学及び統計の普及・啓発に重要な貢献をしており,今後もさらなる発展が期待されることから,日本統計学会統計活動賞を受賞するにふさわしい活動である.
株式会社 Rejouiは 2016 年の創業以来,データサイエンスを軸とした社会課題の解決に取り組んできた.企業を中心にデータ分析や AI 活用,DX 推進の支援を行う一方,2019 年からは各省庁,自治体,教育機関等とも連携し,データサイエンスの社会実装と人材育成に注力している.企画立案から現場への実装,教材開発までを一貫して担い,教育分野における持続的な価値創出を推進している.特に,自らの事業経験に基づき,実業界におけるデータ活用の事例を体系化した教育カリキュラムの開発を強みとしている.代表の菅由紀子氏が持つ統計学・データサイエンス分野の専門的知見と,教育機関での豊富な指導経験が,同社の事業活動および教育事業の強固な基盤を形成している.
株式会社 Rejoui は,小学生から社会人・教育者に至る全世代を対象に,実データに基づく仮説検証プロセスを中核とし,社会課題の解決に接続する統計教育を,課題解決型学習(PBL)を通じて展開している.とりわけ,総務省統計局との連携による統計教育事業や,地方自治体と協働した EBPM 推進事業,初等中等教育におけるデータサイエンス教材開発・教員研修などを通じて,教育と社会実装を一体的に推進してきた点は特筆すべきである.2016 年の創業以来,現場の課題に寄り添った伴走型の支援を継続し,実社会におけるデータ活用の知見を教育へ還元する体系的な教育モデルを構築しており,我が国のデータサイエンス教育の裾野拡大と質的向上の双方に顕著な成果をあげている.以上の実績に鑑み,これまでに培った実践モデルを基に,今後も統計的思考に基づく意思決定を担う人材の育成に貢献し,統計教育の充実およびデータサイエンス教育の推進・発展に寄与することが十分に期待される.以上の活動は日本統計学会統計教育賞に相応しい.
1987年神戸商科大学商経学部卒業,1992年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程中退,同年同大学基礎工学部数理教室文部技官教務職員を経て,1995年関西学院大学商学部専任講師着任,1999年同大学同学部助教授昇任,2007年同大学同学部教授となり現在に至る.2006年2月大阪大学より博士(学術)を取得.2003年9月より1年間,オークランド大学統計学部(ニュージーランド)に客員研究員として滞在.
地道正行氏は 1995 年の関西学院大学商学部赴任以来 30 年にわたり初年次科目「統計学基礎」を担当するとともに,統計学を「データを正しく読むための文法」と位置づけた教育を一貫して実践してきた.数学に必ずしも習熟していない学生が多い文系学部の環境においても,定義の厳密さを重視しつつ理解可能な形で数式を導入し,統計的思考力の基盤形成に顕著に貢献している.さらに独自に構築した財務データ抽出システムを教育に導入し,SQL によるデータ取得から R・tidyverse を用いた前処理,可視化,統計モデリング,再現可能な分析手法までを体系的に学ぶ実践的教育を実現した.学生は実データに基づく探索的分析を通じて理論と応用を統合的に修得し,学会発表に至る成果やデータ解析コンペティションでの受賞を多数生み出している.以上の地道氏の業績は,高等教育における長年にわたる教育実践と先進的教育用データ環境の整備を通じ,他の模範となる統計教育の実践として,その発展に顕著な貢献を果たしている.また,今後も統計教育の充実およびデータサイエンス教育の推進・発展に寄与することが十分に期待され,統計教育賞に相応しい.
2007年東京大学理学部卒業,2012年東京大学大学院数理科学研究科博士課程中退,2013年東京大学博士(数理科学)取得,2009年三菱UFJトラスト投資工学研究所研究員,2012年大阪大学金融・保険教育研究センター特任助教,2014年統計数理研究所統計思考院助教,2015年科学技術振興機構さきがけ研究員(兼任),2019年東京大学大学院情報理工学系研究科准教授,現在に至る.
荻原哲平氏は,確率過程のモデルに対する最尤型・ベイズ型推定の漸近理論と,推定精度の理論的限界を与える局所漸近正規性・局所漸近混合正規性の理論で顕著な業績を挙げてきている.退化した拡散過程のモデルやジャンプ型拡散過程のモデルに対して局所漸近(混合)正規性を初めて示し,最適推定の理論を大きく前進させた.特に確率過程モデルの局所漸近(混合)正規性の証明における理論面での重要な貢献として,従来用いられていた推移確率密度関数の評価を用いない証明を開発し,適用されるモデルを広げたことが挙げられる.さらに,高頻度株価データに内在する観測非同期性やマーケット・マイクロストラクチャー・ノイズを取り入れた統計モデリングについても優れた業績を挙げている他,誤特定モデルの推測理論を発展させることで,拡散過程モデルにニューラル・ネットワークを用いた分析法も考案・実装している.国際的に評価の高い学術誌で出版されたこれら一連の研究成果は従属性データの統計学の裾野を広げるものであり,日本統計学会研究業績賞に相応しいものである.
[1] Ogihara, T. and Stadje, M. (2024). Efficient drift parameter estimation for ergodic solutions of backward SDEs, Scandinavian Journal of Statistics, 51(3), 1181-1205.
[2] Fukasawa, M. and Ogihara, T. (2024). Malliavin Calculus Techniques for Local Asymptotic Mixed Normality and Their Application to Hypoelliptic Diffusions, Bernoulli, 30(2), 983 – 1006.
[3] Ogihara, T. and Uehara, Y. (2023). Local Asymptotic Normality for Ergodic Jump-Diffusion Processes via Transition Density Approximation, Bernoulli, 29(3), 2342-2366.
[4] Ogihara, T. (2023). Asymptotically efficient estimation for diffusion processes with nonsynchronous observations, Japanese Journal of Statistics and Data Science, 6, 505 – 550.
[5] Ogihara, T. (2021). Misspecified diffusion models with high-frequency observations and an application to neural networks, Stochastic Processes and their Applications, 142, 245-292.
2014年京都大学理学部理学科卒業,2016年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了,2018 年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了,同年東京工業大学工学院経営工学系助教,2022年横浜国立大学国際社会科学研究院准教授,2023年東京大学空間情報科学研究センター准教授,2026年東京大学大学院経済学研究科准教授,現在に至る.
栗栖大輔氏は時系列データ,空間データ解析に加え,関数データ,多様体データを含む非ユークリッドデータ解析において優れた研究業績を上げており,研究成果はJournal of the Royal Statistical Society, Series B などの統計科学・計量経済分野において国際的に評価の高い学術誌に掲載されている.これらの研究は,時空間統計分野並びに距離空間に値をとるデータを統一的に扱う統計分野であるランダムオブジェクト解析の発展とその計量経済学等の関連分野に裾野を広げることに大きく貢献している.特に非定常空間データのノンパラメトリック解析,ランダムオブジェクトのノンパラメトリック解析とその因果推論への応用に関する研究では,当該分野を牽引する研究者として国際的に認知されている.栗栖氏のこのような顕著な貢献は,日本統計学会研究業績賞にふさわしいものである.
[1] Kurisu, D. and Otsu, T. (2026). Empirical likelihood for manifolds. Journal of the Royal Statistical Society Series B: Statistical Methodology, 88, 91-119.
[2] Kurisu, D., Otsu, T. and Xu, M. (2026). Nonparametric causal inference with functional covariates. Journal of Business & Economic Statistics, 44, 53-66.
[3] Kurisu, D. and Matsuda, Y. (2026). Series ridge regression for spatial data on Rd. Bernoulli, 32, 590-614.
[4] Kurisu, D., Fukami, R. and Koike Y. (2025). Adaptive deep learning for nonlinear time series models. Bernoulli, 31, 240-270.
[5] Kurisu, D. (2022). Nonparametric regression for locally stationary functional time series. Electronic Journal of Statistics, 16, 3973-3995.
2018年3月早稲田大学教育学部数学科卒業,2019年3月早稲田大学大学院基幹理工学研究科修士課程修了,2019年4月独立行政法人日本学術振興会, 特別研究員DC1,2021年3月同博士後期課程修了,2021年4月早稲田大学基幹理工学部講師, 2022年4月九州大学数理学研究院助教,現在に至る.2023年4月より東北大学 大学院経済学研究科 客員研究員,2025年4月より日本数学会 在外研究奨励フェロー.
[1] Boucher, M., Francq, C., Goto, Y., and Verdebout, T. (2025+) “On runs tests for directional data and their local and asymptotic optimality properties”, to appear in Stat. Sin. (37)2
[2] Goto, Y. and Fujimori K. (2025) “A test for counting sequences of integer-valued autoregressive models”, Electron. J. Stat. 19(2), 4117–4140
[3] Goto, Y., Arakaki, K., Liu, Y., and Taniguchi, M. (2023). “Homogeneity tests for one-way models with dependent errors under correlated groups”, TEST, 32(1), 163–183.
[4] Goto, Y., Kaneko, T., Kojima, S., and Taniguchi, M. (2022). “Likelihood ratio processes under nonstandard settings”, Theory Probab. Appl., 67(2), 246-260.
[5] Goto, Y., Kley, T., Van Hecke, R., Volgushev, S., Dette, H., Hallin, M. (2022). The integrated copula spectrum, Ann. Statist., 50(6), 3563–3591
後藤佑一氏は,統計的時系列解析および複雑依存構造を持つデータに対する推論理論についての研究を推進している.論文[1]では,超球面上データにおける系列相関の検定を扱い,Tangent Markov modelの導入により局所漸近正規性(LAN)を確立し,ランズ検定が局所漸近最適性を有することを示した.論文[2]では,計数時系列の自己回帰モデルにおいて,二項間引き作用素の妥当性を検証する検定問題を扱い,新たな検定手法を構築して漸近的性質を導出した.論文[3]では群間に相関構造を持つ時系列一元配置モデルにおける群間差の検定問題を扱い,F統計量の拡張を提案し,その漸近分布および検定手法の理論的妥当性を証明した.論文[4]では,同時方程式モデルにおける曲指数型分布族の構造下でのLAN成立を示すとともに,一元配置モデルにおける尤度比の特異な漸近展開を明らかにした.論文[5]では,コピュラ経験過程を導入して従来のスペクトル解析を拡張し,自己共分散に依存する線形スペクトル解析の枠組みを脱し,分布全体を保持するスペクトル解析の理論体系を構築した.これらの後藤氏の業績は小川研究奨励賞に相応しいものである.