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2023年度学会賞受賞者の紹介

第 28 回 日本統計学会賞
柿沢 佳秀 氏富澤 貞男 氏
第 3 回 日本統計学会中村隆英賞
原田    泰 氏安田    聖 氏
第 19 回 日本統計学会統計活動賞
情報・システム研究機構 統計数理研究所
第 19 回 日本統計学会統計教育賞
都丸 希和 氏香川県立観音寺第一高等学校 FESTAT
第 17 回 日本統計学会研究業績賞
奥井 亮 氏青木 敏 氏
第 16 回 日本統計学会出版賞
該当なし
第 37 回 日本統計学会小川研究奨励賞
明石 郁哉 氏松田 孟留 氏

第 28 回 日本統計学会賞

柿沢 佳秀 氏

略歴

1991年 東京理科大学理学部応用数学科卒業、1996年 大阪大学大学院基礎工学研究科数理系博士後期課程修了、1996年 北海道大学経済学部講師、1998年 北海道大学経済学部助教授、2007年 北海道大学大学院経済学研究科准教授、2011年 北海道大学大学院経済学研究科教授、2017年 北海道大学大学院経済学研究院教授、現在に至る。

授賞理由

 柿沢氏は大阪大学大学院博士課程の学生時代から論文を出版しはじめ、最初は定常過程の標本分散行列の漸近有効性から始めたが、多彩な才能を発揮し、単調関数による変換からのバートレット調整の提案(Biometrika)、さらには多次元定常過程のスペクトル行列の積分汎関数による判別・分類統計量の提案とその基礎理論と地震波への応用(J. Amer. Stat. Assoc.)を発表した。英文共著(Springer社)では、スペクトル密度関数の積分汎関数の基礎理論構築、時系列判別解析の基礎手法の提案、定常過程の2 次形式への大偏差理論の展開を行い、若くして国際的な檜舞台に出た。その後、バートレット調整の検出力比較を強力に進め歪度修正の仕組みを明らかにし、推定量における、1次有効なら2次有効の現象を検定論で明らかにした。その後、ノンパラメトリックな確率密度推測では非対称カーネルを族として体系化した発想を出し、他の族との関係や歪対称分布論との関係も明らかにした。柿沢氏の研究領域は極めて広汎で、バハドール有効性や、ベルンシュタイン近似による密度関数推定等、多彩であり、国際的にもハイスタンダードにより、日本統計学会賞にふさわしいものである。

主要業績

[1] Masanobu Taniguchi and Yoshihide Kakizawa. Asymptotic Theory of Statistical Inference for Time Series. (2000). Springer, New York.
[2] Yoshihide Kakizawa. Higher order monotone Bartlett type adjustment for some multivariate test statistics. (1996). Biometrika, 83(4), 923-927.
[3] Yoshihide Kakizawa, Robert H. Shumway and Masanobu Taniguchi. Discrimination and clustering for multivariate time series. (1998). Journal of the American Statistical Association. 93, 328-340.
[4] Yoshihide Kakizawa. Third-order average local powers of Bartlett-type adjusted tests: Ordinary versus adjusted profile likelihood. (2017). Journal of Multivariate Analysis. 153, 98-120.
[5] Yoshihide Kakizawa. Multivariate elliptical-based Birnbaum–Saunders kernel density estimation for nonnegative data. (2022). Journal of Multivariate Analysis. 187, 104834, 1-20.

富澤 貞男 氏

略歴

1979年 東京理科大学理工学部数学科卒業、1981年 東京理科大学理学専攻科数学専攻卒業、1983年 東京理科大学大学院理工学研究科情報科学専攻修士課程修了、理学修士、1986年 同博士課程修了、理学博士、1986年 東京理科大学理工学部情報科学科助手、1992年同講師、1997年 同助教授、2001年 同教授、2022年 東京理科大学名誉教授、明星大学情報学部情報学科常勤教授、現在に至る。

授賞理由

 富澤貞男氏は、数理統計学における分割表解析を専門とし、数多くの優れた業績を挙げている。特に、正方分割表解析におけるモデル、モデルの分解、モデルからの隔たりを測る尺度に関する研究は、極めて斬新かつ独創的であり国内外の研究者に大きな影響を与え、分割表解析の発展に大きく貢献した。これらの方法は、医学・薬学、社会学、心理学など幅広い分野で応用されている。また、多くの博士を輩出するなど後進の育成にも尽力し、また学会での要職を多数歴任するなど統計界への貢献も顕著である。最近では、明星大学のデータサイエンス学環の創設に携わり、統計学・データサイエンスに関する教育・研究のさらなる発展に尽力している。富澤氏のこのような統計学の発展および普及に対する多大な貢献は、日本統計学会賞にふさわしいものである。

主要業績

[1] Tomizawa, S. (1984). Three kinds of decompositions for the conditional symmetry model in a square contingency table. Journal of the Japan Statistical Society, 14, 35-42.
[2] Tomizawa, S. (1993). Diagonals-parameter symmetry model for cumulative probabilities in square contingency tables with ordered categories. Biometrics, 49, 883-887.
[3] Tomizawa, S. (1994). Two kinds of measures of departure from symmetry in square contingency tables having nominal categories. Statistica Sinica, 4, 325-334.
[4] 富澤貞男 (2006)、統計学における正方分割表の解析、 数学、58、263-287.
[5] Tomizawa, S. and Tahata, K. (2007). The analysis of symmetry and asymmetry: orthogonality of decomposition of symmetry into quasi-symmetry and marginal symmetry for multi-way tables. Journal de la Société Française de Statistique,148, 3-36.

第 3 回 日本統計学会中村隆英賞

原田 泰 氏

略歴

1974年東京大学農学部農業経済学科卒業、1974年経済企画庁入庁(現内閣府)、同庁国民生活局国民生活調査課長、同庁調査局海外調査課長などを経て、財務省財務総合政策研究所次長、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官。大和総研専務理事チーフエコノミスト、早稲田大学政治経済学術院教授、2015年日本銀行政策委員会審議委員、2020年名古屋商科大学ビジネススクール教授、現在に至る。

授賞理由

 原田泰氏の業績は数量的な歴史分析が大きな比重を占めており、特に、昭和恐慌期の実証分析は、中村隆英先生の昭和恐慌分析を補強するものである。また、経済学、経済政策についての啓蒙的著作においては、データの整理と簡単な実証分析により、事実や経済理論に基づかない思い込みの議論を批判し、少なからぬ人々にとって意外な結論を導き出している。さらに、金融政策を巡る実証分析では、経済変動において、金融政策が重要であることを示している。また、実際に行われた金融緩和政策によって、雇用、財政、所得分配などが改善したことを指摘している。特に、構造失業率3.5%説に対して、本当の構造失業率が大幅に低いとの指摘は貴重である。これらの業績は中村先生のアカデミックな歴史記述のなかから現代の政策を考えさせる『昭和恐慌と経済政策』、『昭和経済史』などと共鳴するものである。原田氏の業績を一言で言えば、統計と現実を見て、素朴な、あるいは本格的な実証分析によって、真実が何かを探求したことである。これは統計の意義そのものであり、また、中村隆英先生が目指されたことでもある。原田氏の広範な業績は、日本統計学会中村隆英賞にふさわしい。

主要業績

[1] “Non-traditional Monetary Policies and their Effects on the Economy”,  International Journal of Economic Policy Studies, 15(1), 23-40, 2021.
[2] “Why was Wilsonian-Taisho moment lost in Japan in spite of its economic success?”, Japanese Journal of Political Science, 19(4), 571-586, 2018.
[3] 「8 金融の量的緩和はどの経路で経済を改善したのか」(増島稔氏との共著)、吉川洋編『デフレ経済と金融政策 内閣府経済社会総合研究所 バブル/デフレ期の日本経済と経済政策2』233-275頁、慶応義塾大学出版会、2009年
[4]『日本国の原則』日本経済新聞出版社、2007年、石橋湛山賞受賞
[5] 「第8章 なぜデフレが終わったのか:財政政策か、金融政策か」(中澤正彦氏との共著)、岩田規久男編著『昭和恐慌の研究』東洋経済新報社、2004年、日経・経済図書文化賞受賞

安田  聖 氏

略歴

1970年 同志社大学工学部卒業、1978年 同志社大学大学院工学研究科博士課程単位取得退学、1978年 京都大学東南アジア研究センター助手、1982年 ペンシルバニア大学経済学部リサーチアシスト、1984年 神戸大学経済経営研究所専任講師、1986年神戸大学経済経営研究所助教授、1994年 一橋大学経済研究所助教授、2000年 一橋大学経済研究所教授、2011年 一橋大学名誉教授、現在に至る。

授賞理由

 安田聖氏は、京都大学東南アジア研究センターやペンシルバニア大学において、アジアリンクモデルや世界リンクモデルの運用に携わり、ビッグデータの分析・保存方法について多くの知見を得た。一橋大学経済研究所では、松田芳郎教授が1996年度に立ち上げた科学研究費重点領域研究「統計情報のフロンティア:ミクロデータによる社会構造分析」において、事務局として尽力するとともに、海外の公的統計の公開方法の状況と制度について調査を行った。その後、安田聖氏は、松田芳郎教授との共同研究として、当時の統計法の範囲で、個人名等を秘匿したデータとして公的統計の20%サンプルを提供する方法を模索した。しかしながら、この提供方法はいくつかの問題により実用には耐えなかった。安田聖氏は、20%サンプルの問題点を克服するため、80%サンプル作成の可能性を探り続け、この研究成果が統計法の改正につながり、現在の匿名データ提供に結びついている。安田聖氏は、経済統計分野における実証分析を可能にする匿名データの制度構築に対して顕著な業績があり、日本統計学会中村隆英賞にふさわしい。

主要業績

[1] 『仮想計算機と計算機言語システム:世界計量経済モデル分析システム』神戸大学経済経営研究所、1986
[2] 『統計情報検索システム』一橋大学経済研究所日本経済統計センター、1999
[3] 『計量モデルの構造と解法 —オーダリングとスパース—』日本経営科学研究所、1999
[4] 『インターネット・セキュリティの落とし穴』日本経営科学研究所、2003
[5] 『農家経済調査データベース・システム』一橋大学経済研究所付属社会科学統計情報研究センター、2010

第 19 回 日本統計学会統計活動賞

情報・システム研究機構 統計数理研究所「統計エキスパート人材育成プロジェクト」

授賞理由

 様々な領域におけるデータ駆動型の科学研究の進展に向けて「統計学」は必須の科学であり、統計の専門人材に対するニーズは極めて高い。このような中、2017年以降、毎年のようにデータサイエンス系学部・学科の新設が続き、この動きはますます加速化している。一方、新たな組織の整備のみが先行して急速に進んだため、新設学部での統計系の専門教員の確保が困難となる問題が顕在化した。これに対応するため、政府において、統計学の専門教員の早期育成体制を整備する旨の方針が決定され、文部科学省の公募により開始された事業が「統計エキスパート人材育成プロジェクト」である。
 この事業は、諸科学分野の大学院生等に対してデータ分析等の基礎となる統計学の講義や統計活用研究の指導を行うことができる「大学統計教員」を育成するとともに、全国の大学等でこれらの教員が中核となり、統計を駆使して学術研究や産業界等に貢献することができる「統計エキスパート」をさらに育成するという、人材育成の好循環システムの構築を目指すプロジェクトである。これにより、事業期間の5年間(2021~2025年度)で30名以上の大学統計教員を育成し、事業期間を含め10年間で約500名の統計エキスパートを育成することを目標としている。このような人材育成の歯車が円滑に回りだせば、「統計教員の確保」という大きなあい路も確実に解消される方向に進むことが期待される。このように、この事業は、広く統計学及び統計の分野において高く評価し得る活動である。

第 19 回 日本統計学会統計教育賞

都丸 希和 氏

略歴

2009年 名古屋大学情報文化学部卒業、2011年 名古屋大学大学院情報科学研究科修士課程修了。2011年 名古屋市立港明中学校、2012年 名古屋大学教育学部附属中・高等学校に勤務、また名古屋大学教職課程教科及び教科の指導法に関する複数の科目にて、非常勤講師など、現在に至る。

授賞理由

 都丸希和氏は中等教育における統計・データサイエンス教育において、名古屋大学との高大連携・産学連携事業の推進にむけた授業デザイン等を踏まえ、先験的かつ汎用性の高い授業事例開発に尽力している。具体的には所属校である名古屋大学教育学部附属中・高等学校にて、2006年からの3期に渡りスーパーサイエンスハイスクール校に認定されており、同氏は授業設計・授業実施に中心的に活動し、所属校における理数探究基礎の授業に取り組んでいる。また同学校において、STEAM教育の導入においても精力的に活動し、開発責任者の一人として携わっている。この活動は、昨今求められている横断的な学びとして、数学にとどまらず、理科・保健体育といった他教科と統計分野との協同につながっている。その他、独自テキストの作成、大学における数学科や情報科の教師を目指す大学生に対して、授業を担当し、高等学校における統計・データサイエンス教員の育成にも携わっている。統計グラフコンクール、和歌山県データ利活用コンペティション、中高生・スポーツデータ解析コンペティション、WWL生徒研究成果発表会など、生徒の統計的課題研究の指導にも積極的に携わっている。以上から、都丸希和氏は、日本統計学会統計教育賞にふさわしい。

香川県立観音寺第一高等学校 FESTAT
大学・社会と初等中等教育現場が連携する統計的探究活動教育の支援:FESTAT(全国統計探究発表会)の基盤構築と展開

授賞理由

 2012年度から高等学校学習指導要領で数学Iに「データの分析」が取り入れられ、2022年度の学習指導要領では、数学や情報においてさらに統計の内容が充実し、数学を用いての日常生活における問題発見・解決も重視されることとなった。統計を利活用した探究活動は、文系・理系を問わず取り組みやすく、生徒が数学の有用性を実感できる活動である。一方で数学科の教員を含め多くの教員は、高校、大学を通して統計を学んでいない。また高校生同士で「統計を利活用した研究」の内容を主とする発表交流の場が少ない。そこで高校現場に統計の指導を根付かせ、広げるための契機の場が必要であったが、その要望に適切に対応したのが本事業「FESTAT(全国統計探究発表会)」である。FESTATは2019年度より、SSH事業(2019-2021年は科学技術人材育成重点枠、2022は基礎枠)として実施され、全国から多数の高校が参加しており、高等学校における統計・データサイエンス教育の普及としても十分に評価できる。基調講演や応援メッセージ、教員同士の情報交換会、高校で統計・データ分析の課題研究で成果をあげた学生が司会進行やファシリテーター、応援メッセージ、招待発表をするなど、毎年度工夫を凝らした内容となっている点も高く評価できる。以上の活動から、香川県立観音寺第一高等学校による事業FESTATは、日本統計学会統計教育賞にふさわしい。

第 17 回 日本統計学会研究業績賞

奥井 亮 氏

略歴
1998年 京都大学経済学部 卒業、2000年 京都大学大学院経済学研究科修士課程 修了、2005年 ペンシルバニア大学経済学部博士課程 修了 PhD in Economics、2005年 香港科技大学経済学系 助理教授、2009年 京都大学経済研究所 准教授、2017年 上海紐約大学 准教授、2019年 ソウル大学校経済学部 副教授、2022年 東京大学大学院経済学研究科 教授、現在に至る。
授賞理由
 奥井亮氏は、異質性や構造変化を持つ動的パネルデータの分析において多数の顕著な業績を挙げている。潜在的なグループ構造を持ち構造変化がグループごとに異なるモデルの識別と推定に関する研究や、潜在的なグループ構造と回帰係数の値の両方が構造変化点で変化するモデルに関する研究においては、パネルデータ分析における異質性や構造変化の重要性を示す優れた成果を挙げている。また、観測単位間で異なる動的構造を持つパネルデータを分析するためのモデルフリーアプローチの研究では、複雑で多様な動的構造を持つパネルデータを分析するための柔軟で実装が容易な優れた手法を開発している。これらの研究成果はJournal of Econometrics, Econometrics Journalなどの世界的に評価の高い学術雑誌に掲載されている。奥井氏の対象論文に代表される統計学の発展への顕著な貢献は、日本統計学会研究業績賞にふさわしいものである。
主要業績

[1] Lumsdaine, R. L., Okui, R., & Wang, W. (2023). Estimation of panel group structure models with structural breaks in group memberships and coefficients. Journal of Econometrics, 233(1), 45-65.
[2] Okui, R., & Wang, W. (2021). Heterogeneous structural breaks in panel data models. Journal of Econometrics, 220(2), 447-473.
[3] Okui, R., & Yanagi, T. (2020). Kernel estimation for panel data with heterogeneous dynamics. Econometrics Journal, 23(1), 156-175.
[4] Okui, R., & Yanagi, T. (2019). Panel data analysis with heterogeneous dynamics. Journal of Econometrics, 212(2), 451-475.
[5] Lee, Y.-J., Okui, R., & Shintani, M. (2018). Asymptotic inference for dynamic panel estimators of infinite order autoregressive processes. Journal of Econometrics, 204(2), 147-158.

青木 敏 氏

略歴
1996年 東京大学工学部計数工学科 卒業、1998年 東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻博士前期課程 修了、2000年 東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻博士後期課程 退学、2004年 博士(情報理工学)(東京大学)。2000年 東京大学大学院情報理工学系研究科 助手、2005年 鹿児島大学理学部数理情報科学科 助教授、2015年 神戸大学大学院理学研究科数学専攻 教授、現在に至る。
授賞理由
 青木敏氏は、一部実施実験計画に関して、従来は2水準の因子について定式化されていた、特定の水準の組合せが実施すべき実験であるか否かを示す多項式指示関数を、3以上の水準の因子を扱えるように拡張し、多項式指示関数の係数が満たす代数方程式の系を導出し、計画の意味が明白な多項式指示関数の表示を定義した。一部実施計画を列挙するには、多項式指示関数の係数が満たす代数方程式の系を解く必要がある。青木敏氏は、多項式環における素イデアル分解を有効に用いて、素朴な方法では計算が困難であった、ある一部実施計画の分類を与え、可換環論において根本的な概念である素イデアル分解の新たな統計学的応用を見出した。青木敏氏の一連の研究は、統計学的に重要な問題の代数的定式化、計算が困難な問題の抽出、計算代数を活用した問題の解決、統計学的応用への展開という、計算代数統計研究の模範を示している。計算代数の立場からも意義深い研究を行う一方で、和文の入門書も出版し、計算代数統計分野の幅広い発展に貢献してきた。以上に述べた青木敏氏の近年の一連の業績は、日本統計学会研究業績賞にふさわしい。
主要業績

[1] Aoki, S. (2019) Characterizations of indicator functions and contrast representations of fractional factorial designs with multi-level factors, Journal of Statistical Planning and Inference 203: 91-105.
[2] Aoki, S., and Noro, M. (2022) Use of primary decomposition of polynomial ideals arising from indicator functions to enumerate orthogonal fractions, Japanese Journal of Statistics and Data Science 5: 165-179.
[3] 青木敏 (2018) 計算代数統計 -グレブナー基底と実験計画法- 共立出版

第 16 回 日本統計学会出版賞

該当なし

第 37 回 日本統計学会小川研究奨励賞

明石 郁哉 氏

略歴
2011年 早稲田大学基幹理工学部卒業、2015年 早稲田大学基幹理工学研究科 博士課程修了(学位取得)、2015年 日本学術振興会特別研究員PD、2016年 早稲田大学基幹理工学部 助手、2017年 同助教、2018年 早稲田大学理工学術院総合研究所 講師、2019年 東京大学大学院経済学研究科 講師、現在に至る。
受賞論文

[1] Akashi, F., Taniguchi, M., Monti, A.C. and Amano, T. (2021). Diagnostic Methods in Time Series. JSS Research Series in Statistics, Springer Singapore.
[2] Akashi, F., Taniguchi, M. and Monti, A.C. (2020). Robust causality test of infinite variance processes. Journal of Econometrics, 216(1), pp.235-245.
[3] Akashi, F., Bai, S. and Taqqu, M.S. (2018). Robust regression on stationary time series: a self-normalized resampling approach. Journal of Time Series Analysis, 39(3), pp.417-432.
[4] Akashi, F., Dette, H. and Liu, Y. (2018). Change point detection in autoregressive models with no moment assumptions. Journal of Time Series Analysis, 39(5), pp.763-786.

受賞論文の評価

 明石郁哉氏は、非正則時系列モデルに対する様々な頑健化手法を用いた統計理論の研究に携わり、裾の重い確率過程に対する推測手法の構成、長期記憶性を持つモデルに対する分割標本化を用いた推測理論の構成などの貢献がある。特に時系列モデル特有の構造や問題点に着目したうえで自己加重法・経験尤度法を用いた解決方策を見出しており、独立モデルに対する結果を本質的に拡張するものである。また明石氏の一連の研究では一般的な先行研究とは異なり、モデル分散の有無や誤差分布が完全に未知の場合にも機能する統計手法が構築されていて、基礎的なモデルの推測のみならず、無限分散モデルの因果性検定、変化点解析にも研究を展開している。これらの結果はJournal of Econometricsなどのトップジャーナルに採録されており、さらに英文著書で国際的に広く研究成果を発信している。これらの研究成果は従前の研究における制約を取り払い、高度、新規的な理論展開も与えていて、該当分野に新地平を拓くものである。また明石氏は国際的にも該当分野のリーダー的な存在であり、現在もブレークスルー的研究を進展しつつある。これらの業績は、日本統計学会小川研究奨励賞にふさわしいものである。

松田 孟留 氏

略歴

2012年 東京大学工学部計数工学科卒業
2017年 東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了
2017年 東京大学大学院情報理工学系研究科特任助教
2020年 理化学研究所脳神経科学研究センターユニットリーダー
2022年 東京大学大学院情報理工学系研究科准教授
現在に至る。

受賞論文

[1] T. Matsuda and W. E. Strawderman. Estimation under matrix quadratic loss and matrix superharmonicity. Biometrika, 109, 503-519, 2022.
[2] T. Matsuda, F. Homae, H. Watanabe, G. Taga and F. Komaki. Oscillator decomposition of infant fNIRS data. PLOS Computational Biology, 18(3), e1009985, 2022.
[3] S. Amari and T. Matsuda. Wasserstein statistics in one-dimensional location-scale models. Annals of the Institute of Statistical Mathematics, 74, 33-47, 2022.
[4] T. Matsuda, M. Uehara and A. Hyvarinen. Information criteria for non-normalized models. Journal of Machine Learning Research, 22, 1-33, 2021.
[5] T. Matsuda and W. E. Strawderman. Predictive density estimation under the Wasserstein loss. Journal of Statistical Planning and Inference, 210, 53-63, 2021.

受賞論文の評価

 松田孟留氏は、統計学の基礎理論に関する研究を行うとともに、応用数理や脳神経科学などの他分野との共同研究に積極的に取り組んでいる。論文[1]では「行列優調和性」という新たな数学的概念を導入することで、ベクトルの縮小推定に関する古典的な理論の行列への一般化を与えている。また、最適輸送理論におけるWasserstein距離に基づく統計的推定と予測に関する研究を行っている[3,5]。論文[4]では、規格化定数の計算が困難な統計モデルに適用可能な情報量規準を開発している。さらに、時系列データの背後に潜む振動子をデータ駆動的に抽出する汎用的な統計手法を開発し、この手法を用いた脳神経科学の研究者との共同研究[2]を行っている。このように、松田氏は、統計学と関連分野における先駆的な研究を推進し、ラトガース大学のWilliam Strawderman教授、ヘルシンキ大学のAapo Hyvarinen教授と共同研究を行うなど国際的に活躍しており、日本統計学会小川研究奨励賞にふさわしい。

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